蛇美

私は今日まで生きてきました…

温故知新 新年に昔の日記を読み返してみたwww

昔の日記です。
年頭にあたって、改めて読み返すと感慨深いものがありますな・・・

【ダメ鍼灸師日記】「昭和の替え歌、マジすげぇ〜!」

先ほど知り合いに鍼灸施術を請われた。
腰の痛いおじいさんに鍼を打ってほしいとのこと。
わたしは、初見のヒトの施術を即座に引き受けることは、まずしない。
(まぁ〜、それこそわたしが3流である証拠なのだが・・・)
まして、今日は体調不良で、午前中予約の入ってた患者さんに無理言って別の日に替えて頂いたばかりだというのに・・・、
その知り合いはわたしの家の前までもうすでに迎えに来てるという。

・・・そげなご無体な

ちなみに、わたしはどんなに親しい友人にも自分の住所を教えたりは絶対しない。
こういうことがあるから・・・ね。
でも、知り合いの中には特殊能力を発揮する輩もいて、わたしの住所が探り当てられたりすることもたまにあるのだ。

ほどなくして、その特殊能力者がドアの前でヤクザな借金取りの如くピンポンをしきりに鳴らしている。
近所の手前もあり、仕方がないのでしぶしぶ知人についていく。
知り合いの説明では、何でも、その患者さんは鍼が大好きであちこちの鍼灸院に通うある意味、その道の""の方だそうで、今日はかかりつけの鍼灸院が休院とのこと。

知り合いの説明を聞きながら、いやな予感が膨れ上がる。
こういう「通」の方は、好みのスタイルが確立しているヒトが多い。
目(?)も大変肥えている。
こういうヒトは、少しでも納得いかないことをすると、
拒絶する
不機嫌になる
突然怒りだす!!

一方、わたしといえば・・・
まるで未熟が服を着て歩いているようなもの。
患者さんが怒り出すのは必定である。
きっとこれは、太陽が西から昇っても、
変わることはないだろう・・・

・・・まずい!!逃げなきゃ!

わたしの<ゴースト>が囁く!(草薙素子風)
が、しかし、<ゴースト>の囁きに耳を傾ける間もなく、
あっけなく患者さんの家についてしまった。
知人に連れられ家に入ると、
患者さんは大きな部屋でテレビを前に寝ておられた。



・・・うううぅ、今にも広島弁
わりゃ、魂(タマ)取ったるどぉ!
そんな台詞がマジで似合いそうな爺さんがそこにいた。
その雰囲気は、まさにあの映画の菅原文太だ!
いや、それ以上だ!モノホンだ!!
(きっと、この爺さんの逆鱗に触れて
東京湾に沈んでいる人が何人もいるに違いない!)


挨拶もそこそこに、脈を診るまで・・・
「どう言い訳してここから逃げ出そうか」
そればかり考えていた。
が、恐怖で何も思い浮かばない。

脈を診て、ギョッとした!
思わず顔を診る・・・
やはり、白目が赤ん坊のように青い!
うううぅ、マジ最悪www!!
この文太・・・、肝気が強い!!

肝気が強いヒトは、何事にも厳しいヒトが多い。
その上、コレが亢進すると・・・
時に、ヒステリーのような行動をとることもある。

目の前に、東京湾の底で魚に突かれる哀れな自分の姿が浮かんでくる。
(このままではマジやばい!! ヤバ過ぎるぅwww

湧き上がる恐怖を抑えつつ自分の見立てや治療方針を話す・・・
思いっきり声が上ずっているのが自分でも分かる。
震える手で道具箱から鍼を出す・・・

その間、文太さんは、何が不満なのか
ずっと黙って目をつぶっている。
思いのほか眉間のしわが深い・・・

とその瞬間!!
・・・ぎょぇぇええwwwwww!
鍼管落としたwwwwwwww!
わたし、オワタwwwwwwww!!!

今度は、あの映画の金子信雄の姿が目の前にちらつく。

「指だけは・・・、
指だけは勘弁しちゃってつかぁーさい!
お願いじゃけぇwww!」




今にも泣き出して、詫びのひとつも入れようとした瞬間、
テレビからコマーシャルが流れてきた。
ソフトバングのCMで、タダさんとお父さん(犬)が自転車に乗って歌を口ずさんでるアレだ。
すると、それまでずっと黙っていた患者さんが急に話しかけてきた。

「先生、この歌知っとるかのう?」
※この方は普通に標準語で話されていました。
タダ広島弁の方がより臨場感が出るということで、
あえて広島弁に翻訳してお届けいたします。


「ほんと、スンマソ・・・、ひぃぃぃぃっ???」

青い山脈言うんじゃ」



それまで苦虫を嚊んだようなモノホンの文太親分が、ヒトが変わったように話し続けた。

この歌が一世を風靡したこと。
カラオケなんかない時代、みんなで替え歌を大合唱して盛り上がったこと。
もはや陽気なおしゃべり文ちゃんと化した患者さんは、
ただただアゼンとするわたしを前に、替え歌まで大声で歌い始めた。

♪ 乳も出ました、毛も生えたぁ〜 わたしも女になりましたぁ〜 ♪
・・・(中略)、早くして、早くしないと父ぃ〜が来るぅ〜♪
♪父が来ました、父がキタ〜 わたしも仲間に入れてよねぇ〜・・・(略)♪



コ、コレは一体何なの?!
ついに肝気が極まったのか?!
それにしても、この替え歌は?!
歌詞があまりにぶっ飛びすぎてるから!!
家族愛を謳うには、もうパンクも、デス・メタルも超えちゃってるからぁ!!
閣下ぁ、もう蝋人形とか言ってる場合じゃないからぁwww!!

唖然としながらも、その替え歌の歌詞の面白さに思わず噴出すわたしに気をよくしたのか、陽気な文ちゃんは頼みもしないのに3番(おばあさんのところ)までを一気に歌いきってしまった。

「すっかり治療の邪魔をしてしもうたの。ハハハ、ほいじゃ、改めてお願いしますわぃ。」

歌い終わって、肝気もすっかり抜けたのか、
文ちゃんは深いしわを緩めて優しく言ってくれました。

替え歌の面白パワーのおかげなのか?!
文ちゃんの笑顔があんまり優しかったからなのか?!
すっかりわたしの緊張もどこかへ飛んで消えていた。
(てか、いつの間にかすっかり"文ちゃん"呼ばわりしてるし、わたし)

そして、もっと驚いたのは・・・、
脈診で見立てた肝気の乱れがすっかりよくなっていたことだった。
おかげさまで、ヘナチョコ鍼灸師のわたしでも、
何とかその場を切り抜けることができた。

施術が終わって、帰り際、
陽気な文ちゃんはわざわざ玄関までわたしを見送ってくださった。

「あんまり先生が怖い顔をしとるんで、
てっきり痛い鍼だと思っとったら、
随分優しい鍼なさるんじゃのう、先生は。
お蔭様で、すっかり足先まで暖かくなりましたわぃ。」

文ちゃんのその言葉は、ヘナチョコなわたしにとって、
涙が出るほどうれしいものだった。
と、同時に、もしかしたら文ちゃんも
わたしのことがチョット怖かったのかもしれない・・・
とそんなことが心をかすめた。

きっと、わたしの過剰な緊張が
患者さんを余計に不安にさせたのかもしれない・・・
そんなことを改めて思い知らされた。

「イエイエ、わたしなんかじゃなくて、
あの替え歌が元気にしてくれたんですよ。うひひひひ」
わたしも変な笑いと一緒に、本音がつい口から漏れ出ていた。


・・・にしても、
『昭和の替え歌、マジで半端ねぇ〜!!』

帰り道、すっかり汗ばんでしまった治療費を
ポッケの中でさらに握り締めながら、
わたしは心の中でつぶやくのだった。

2014年01月03日 17:47