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Lancet Psychiatry誌
成人アスペルガー症候群に高い自殺リスク
一般成人の9倍以上、うつ病が危険因子
成人後にアスペルガー症候群と診断された患者における自殺念慮リスクは、一般成人の9倍以上で、うつ病が危険因子であることなどが臨床調査データの後ろ向き解析の結果として示された。
英Cambridge大のSarah Cassidy氏らが、Lancet Psychiatry誌電子版に2014年6月25日に報告した。
成人してからアスペルガー症候群と診断される患者が時々存在する。
ただし、成人患者は支援がない状態に置かれやすく、QOLの低下や就労困難、社会的隔離や排除が生じるとともに、うつ病リスクが高まる。
うつ病は自殺完遂の危険因子であり、自殺する患者の90％超がうつ病だという報告もある。
診断が遅れると社会的な支援の対象にならない場合が多いにもかかわらず、これまで、成人後にアスペルガー症候群と診断された患者の自殺念慮や自殺企図の経験について調べた研究はほとんどなかった。
著者らは、英国の患者を対象に自己申告された情報を基に自殺行動リスクを分析し、危険因子も同定しようと考えて、臨床調査データの後ろ向き解析を行った。
2004年1月23日から2013年7月8日に、英国の成人患者のための専門施設、Cambridge Lifespan Asperger Syndrome Service（CLASS）で診断を受けたアスペルガー症候群患者の情報を得た。
この施設では、新規診断患者に対して、自己評価調査票を用いて、患者のそれまでの人生におけるうつ病診断の有無、自殺念慮、自殺の計画または自殺企図の経験などを調べるとともに、自閉症傾向（Autism Spectrum Quotient調査票を用いて評価）や共感性（Empathy Quotient調査票を用いて評価）のスコアも記録している。
それらの情報を基に同施設は、うつ病診断歴がある、または自殺念慮などの経験がある患者に直接面接して、さらなる情報を収集している。
今回著者らは、Medline、PsycINFO、Google Scholarに1995年1月1日から2013年9月20日に登録されていた16〜75歳で、英国の一般集団、内科疾患の患者集団、精神疾患の集団を対象に、自己申告に基づいて自殺行動の発生率を調べた研究のデータを、成人のアスペルガー症候群患者との比較対照に用いた。
調査期間中にCLASSにおいて374人の成人（男性256人、女性118人）がアスペルガー症候群と診断されていた。
うち355人（95％）の情報が得られた。診断時の平均年齢は31.5歳（レンジは17〜67）だった。
自殺念慮経験について回答していた367人中243人（66％）がこの経験を有し、自殺計画または企図の経験について回答していた365人中127人 (35％)がこれらの経験を持っていた。
また、うつ病診断歴について報告していた368人中116人（31％）がうつ病と診断されていた。
男性と女性の間で、これらの割合に有意差は見られなかった。
うつ病診断歴を有する患者では、そうでない患者に比べ自殺念慮経験を有する割合が高く、オッズ比は4.3（95％信頼区間2.4-7.7、P＜0.0001）だった。
自殺計画または企図の経験も同様で、オッズ比は2.4（1.5-3.8、P＜0.0001）だった。
自殺計画または企図の経験を有する患者では、これらの経験を持たない患者よりも自閉症傾向を示すスコアが有意に高かったが、共感性のスコアには差は見られなかった。
自殺念慮経験、うつ病診断経験の有無と自閉症傾向、共感性の間には有意な関係は認められなかった。
次に、アスペルガー症候群の成人患者とそれ以外の成人集団を比較した。それまでの人生で自殺念慮経験を有する人々の割合は、一般英国民に比べてアスペルガー症候群患者で有意に高く、オッズ比は9.6（7.6-11.9、P＜0.0001）だった。内科疾患を1つ有する患者と比較してもオッズ比は5.8（4.6-7.4、P＜0.0001）、2つ以上の内科疾患を有する患者との比較においてもオッズ比は3.6（2.7-4.9、P＜0.0001）だった。
他の精神疾患を有する患者との比較でも、オッズ比は1.3（1.0-1.7、P＜0.019）となった。
得られた結果は、成人してからアスペルガー症候群と診断された患者では自殺関連行動の頻度が高いこと、うつ病が重要な危険因子であることを示唆した。
「アスペルガー症候群の成人患者はしばしば、二次性うつ病の危険因子（社会的隔離や社会的排除、失業など）を複数有するため、そうした患者には適切な支援を提供して、うつ病リスクを下げる必要がある」と著者らは述べている。
原題は「Suicidal ideation and suicide plans or attempts in adults with Asperger's syndrome attending a specialist diagnostic clinic: a clinical
成人アスペルガー症候群に高い自殺リスク
一般成人の9倍以上、うつ病が危険因子
成人後にアスペルガー症候群と診断された患者における自殺念慮リスクは、一般成人の9倍以上で、うつ病が危険因子であることなどが臨床調査データの後ろ向き解析の結果として示された。
英Cambridge大のSarah Cassidy氏らが、Lancet Psychiatry誌電子版に2014年6月25日に報告した。
成人してからアスペルガー症候群と診断される患者が時々存在する。
ただし、成人患者は支援がない状態に置かれやすく、QOLの低下や就労困難、社会的隔離や排除が生じるとともに、うつ病リスクが高まる。
うつ病は自殺完遂の危険因子であり、自殺する患者の90％超がうつ病だという報告もある。
診断が遅れると社会的な支援の対象にならない場合が多いにもかかわらず、これまで、成人後にアスペルガー症候群と診断された患者の自殺念慮や自殺企図の経験について調べた研究はほとんどなかった。
著者らは、英国の患者を対象に自己申告された情報を基に自殺行動リスクを分析し、危険因子も同定しようと考えて、臨床調査データの後ろ向き解析を行った。
2004年1月23日から2013年7月8日に、英国の成人患者のための専門施設、Cambridge Lifespan Asperger Syndrome Service（CLASS）で診断を受けたアスペルガー症候群患者の情報を得た。
この施設では、新規診断患者に対して、自己評価調査票を用いて、患者のそれまでの人生におけるうつ病診断の有無、自殺念慮、自殺の計画または自殺企図の経験などを調べるとともに、自閉症傾向（Autism Spectrum Quotient調査票を用いて評価）や共感性（Empathy Quotient調査票を用いて評価）のスコアも記録している。
それらの情報を基に同施設は、うつ病診断歴がある、または自殺念慮などの経験がある患者に直接面接して、さらなる情報を収集している。
今回著者らは、Medline、PsycINFO、Google Scholarに1995年1月1日から2013年9月20日に登録されていた16〜75歳で、英国の一般集団、内科疾患の患者集団、精神疾患の集団を対象に、自己申告に基づいて自殺行動の発生率を調べた研究のデータを、成人のアスペルガー症候群患者との比較対照に用いた。
調査期間中にCLASSにおいて374人の成人（男性256人、女性118人）がアスペルガー症候群と診断されていた。
うち355人（95％）の情報が得られた。診断時の平均年齢は31.5歳（レンジは17〜67）だった。
自殺念慮経験について回答していた367人中243人（66％）がこの経験を有し、自殺計画または企図の経験について回答していた365人中127人 (35％)がこれらの経験を持っていた。
また、うつ病診断歴について報告していた368人中116人（31％）がうつ病と診断されていた。
男性と女性の間で、これらの割合に有意差は見られなかった。
うつ病診断歴を有する患者では、そうでない患者に比べ自殺念慮経験を有する割合が高く、オッズ比は4.3（95％信頼区間2.4-7.7、P＜0.0001）だった。
自殺計画または企図の経験も同様で、オッズ比は2.4（1.5-3.8、P＜0.0001）だった。
自殺計画または企図の経験を有する患者では、これらの経験を持たない患者よりも自閉症傾向を示すスコアが有意に高かったが、共感性のスコアには差は見られなかった。
自殺念慮経験、うつ病診断経験の有無と自閉症傾向、共感性の間には有意な関係は認められなかった。
次に、アスペルガー症候群の成人患者とそれ以外の成人集団を比較した。それまでの人生で自殺念慮経験を有する人々の割合は、一般英国民に比べてアスペルガー症候群患者で有意に高く、オッズ比は9.6（7.6-11.9、P＜0.0001）だった。内科疾患を1つ有する患者と比較してもオッズ比は5.8（4.6-7.4、P＜0.0001）、2つ以上の内科疾患を有する患者との比較においてもオッズ比は3.6（2.7-4.9、P＜0.0001）だった。
他の精神疾患を有する患者との比較でも、オッズ比は1.3（1.0-1.7、P＜0.019）となった。
得られた結果は、成人してからアスペルガー症候群と診断された患者では自殺関連行動の頻度が高いこと、うつ病が重要な危険因子であることを示唆した。
「アスペルガー症候群の成人患者はしばしば、二次性うつ病の危険因子（社会的隔離や社会的排除、失業など）を複数有するため、そうした患者には適切な支援を提供して、うつ病リスクを下げる必要がある」と著者らは述べている。
原題は「Suicidal ideation and suicide plans or attempts in adults with Asperger's syndrome attending a specialist diagnostic clinic: a clinical
2014年07月14日
