蛇美

私は今日まで生きてきました…

信頼できる催眠家の見つけ方

催眠が上手いから信頼できる?
―いいえ。
催眠誘導など特別な技術ではないので、信頼性の基準としては不適切です。

人間的に素晴らしければ信用できる?
―いいえ。
たしかに人間性も重要ですが、それはセラピストとしての有能性とはまた別問題です。
それに、詐欺師にとって、素晴らしい人間を演じることなどたやすいことです。
その証拠に、詐欺師はたいていさわやかで人間的に魅力的に見えます
(三流詐欺師は除く)。

では、信頼できる催眠家はどこにいるのですか?
―結論から言えば次の3点が目安になります。
あくまで目安ですが参考にしてください。

・自分の行っている方法についての論文(催眠など)をメジャーな学術雑誌に掲載していること。

・公的機関・大学・病院などの信頼できる機関とのつながりを持っていること。

・催眠や催眠関連の方法をアピールして「いない」こと。



資格を持っているとか、人間的に優れているとか、有名であるとか、催眠誘導が上手いということは心理学や医学に基づいたセラピーの腕とはあまり関係がありません。
口のうまさや商才は持っているかもしれませんが。

催眠の腕に定評のある人は催眠をそれほどアピールしないということもポイントです。
こう書くと「催眠家なのに催眠を前面に出さないなんて・・・」と疑問に思われるかもしれません。
でも思い出してください。
催眠は他の心理療法の専門的技術とは異なり、簡単な技術です。
今もっとも日本に広がっている催眠の資格(全米催眠療法協会認定)は無試験で、しかも最短2日で取得可能です。
ネコでも資格を取得できてしまったという笑い話のような話も存在します(こちら)。

本当の催眠の専門家というのは催眠の使いどころを知っているので、みだりに催眠を使いません。
20世紀最高の催眠家と言われるエリクソンでさえも催眠はそれほど多用しなかったのです。
エリクソンの症例集を見ると、いかにエリクソンが催眠を使わずに柔軟に対応していたかがわかります。
しかし、一般には催眠は特別な技術だと思われているので、「催眠」という言葉は強力な客寄せになり、カリスマ性を高める道具になります。
そのため、無能な催眠療法家や催眠術師ほど催眠をむやみやたらに強調します。

催眠術師や催眠療法家という肩書きを持っていなくても催眠が上手い専門家はいます。
むしろそういった肩書きを持たない心理学や医学のプロの中にこそ催眠を適切に使いこなせる専門家がいると表現したほうが正しいかもしれません。

「信頼できる催眠家はどこにいる?」の答えは初めに書いたとおりです。
それは、研究実績(論文、学会発表)のある専門家や公的な位置づけをもっている専門家を選ぶことです。
学会発表や論文投稿を通じて他の専門家から冷静なチェックを受けることで、自分のやり方こそが正しいという独りよがりな思考にはまりにくくなります。
また、公的な立場にある人であれば、倫理違反に対するサンクション(処罰)の可能性があるので、独りよがりな人は少ないです。

ちなみに、日本で今のところ最もまともな心理の資格である臨床心理士の業務は、「臨床心理アセスメント」「臨床心理面接」「臨床心理的地域援助」「臨床心理学的研究」と定められています。
クライエントに対する直接的援助だけでなく、論文を通じて「研究」を行うことも専門家の仕事として定められているのです。
したがって、カウンセリングやセラピーをやっているだけでは専門家(プロ)とは呼べず、研究成果を論文として発表することが必要なのです。

よくある勘違いは「臨床心理士だったら信用できる」という思い込みです。
資格よりも業務内容で判断するべきです。
資格が無くとも、上記の4つの業務を行っている人は専門家と呼べるでしょう。

ただし、データが示すように、インターネットではまだまだ専門家は見つかりにくいのが現状です。
早急な対応が求められます。

2016年03月11日