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【メンタルケア】『パニック発作を起こす主な心の病気とその対処法』

岐阜大学大学院 精神病理学分野 
教授 塩入俊樹先生

まず初めに、パニック発作を起こす主な心の病気とその対処法をお話しします。
パニック発作とは、急激に強烈な恐怖感や不快感が襲い、以下の13症状のうち、少なくとも4つ以上が認められるものです。もちろん、体の病気はないことが前提です。

①動悸、心悸亢進 (動悸)
②発汗
③身震い
④息切れ
⑤窒息感
⑥胸痛
⑦嘔気
⑧めまい
⑨現実感喪失
(自分が自分でないような感じ。自分が現実を生きているという確かな実感がわかなくなること)
⑩コントロールを失う恐怖
⑪死の恐怖 (“死んでしまうのではないか”等)
⑫異常感覚 (うずき感)
⑬冷感・熱感

“発作”というくらいですから、これらの症状は急激に始まり、大抵症状のピークは10分以内に訪れます。“自律神経の嵐”とも表現されますが、実は3つの種類があり、それぞれに関連の深い病気があります。

1.“予期しない”パニック発作
この発作は、全く予期せず、突然に、青天の霹靂のように起こることが特徴です。
上記の症状が4つ以上当てはまり、この発作が2回以上認められることが、パニック障害の診断に必須です。

2.“状況依存性”パニック発作
特定の状況(例:人前に出た時、嫌なものを見た時など)や誘発因子に直面した時に、ほぼ必ず起こるパニック発作です。
社交不安障害や特定の恐怖症(“閉所恐怖”や“高所恐怖”、血を見ることを恐れる“血液恐怖”や、クモを極端に嫌う“クモ恐怖”など)、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの病気が深く関わっています。

3.“状況準備性”パニック発作
このタイプの発作は、1と2の中間とも言えるもので、“特定の状況で発作が起こるものの、必ずしも発作が認められるわけではない“という場合です。

例えば、電車の中で“予期しない”パニック発作が起きたことのあるパニック障害の患者さんが、「再び電車に乗ると、発作が起きることが多いけれども、起きない時もある」といったケースです。このタイプは、パニック障害で最も多く見られます。

パニック発作の対処法
では、パニック発作の対処法は、どうしたらよいのでしょうか。
もちろんお薬を服用することも重要ですが、お薬以外で患者さん自身が対処できるものがあります。まず覚えておくべき事は、発作自体は生命に危険はないということです。
更に、持続時間は20〜30分程で、その後は自然と治ってしまいます。
ですから、発作が起こっても「嵐が通り過ぎるまで待つ」気持ちを持つことが大切です。

また、発作が起こっても慌てずに、発作による症状が消失していくのを経験することが、
「発作が起こっても大丈夫!」といった自信を得るために必要です。
発作によって過呼吸となり、もし手足がしびれてきた場合には「ペーパーバック療法」といって、紙袋を口に当て、自分の息を再び吸うようにすると症状が治まっていきます。このように患者さん自身が対処法を知り、“パニック発作でパニックにならない”ことがとても重要です。

2012年03月08日