蛇美

私は今日まで生きてきました…

『100万回死んだ猫』

むかし、100万回死んで100万回生き返った黒いドラネコがいました。



ある時は王様の猫となり、
ある時は船乗りの猫に、
ある時は泥棒の、
おばあさんの、
女の子の…と、

そのネコは100万回生まれかわっては、
様々な飼い主のもとで100枚回死んでいきました。
100万人の飼い主はみんなこのネコが死ぬ度に
ひどく悲しみ、泣きじゃくったのですが、
ネコは、まったく悲しくありませんでした。

なぜなら、ネコは飼い主のことがみんな大嫌いだったのです。
数えきれないほどの大嫌いな飼い主に飼われながら死を繰り返すうちに、
いつしか、死ぬが平気になっていたのでした。
そしてネコは、自分のことだけしか好きになれなくなってしまいました。


ある時、ネコは野良猫となっていました。
飼い主のいないネコははじめて自由を感じたのでした。
ネコは勝手気ままに自分の凄さを自慢しては、
メス猫達にちやほやされ、しまいにはボス猫になりました。

ところがある日、ボスとなったネコは、
雪のようにきれいな白いネコに恋をしました。
ボスネコは、いつものように100万回生きたことを自慢して
なんとか白いネコの気を引こうとするのですが、
その白いネコは「そう。」とだけうなずき、
素っ気ない態度は変わりませんでした。

いつしか黒いドラネコは、その美しい白いネコと
ずっと一緒にいたいと心から願うようになりました。

「そばにいてもいいかい。」
本心を打ち明ける黒いドラネコに
白いネコはそっと答えました

「・・・ええ。」

そして2匹ネコは一緒になり、仲睦まじく幸せに暮らしました。





黒いドラネコは、はじめて生きるよろこびを感じ、
いつまでも白いねこと一緒にいたいと思っていました。

やがて月日が経ち、
ある日、白いネコは黒いドラネコに寄りそったまま
冷たく動かなくなってしまいました。

黒いドラネコははじめて、とめどなく心の底から湧き上がってくるような
深い悲しみを知りました。
それから黒いドラネコは100万回泣き続けました。
そして、とうとう白いネコの隣で動かなくなりました。

・・・それきり、黒いドラネコが生き返ることは
もうありませんでした。




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「いい話だ!」
「俺はこの話が嫌いだ!」
「?」
「・・・なぜなら、俺は猫が嫌いだ!」
「フフフ、お前ならそう言うと思ったぜ」

(「カーボーイビバップ」ジェット&スパイクの会話より)



和歌山電鉄の三毛猫駅長「たま」が22日夜に急性心不全で死んじゃったんだって。
ニュースを聞いて訳もなくこの話を思い出した。

・・・「たま」はさ、一体何を思って死ぬんだろう?
ふとそんな埒もないことが浮かんできちゃった。

まぁ〜、何はともあれ 
たまのご冥福に合掌を・・・


                      

2015年06月24日 22:29