蛇美

私は今日まで生きてきました…

催眠業界のメディア戦略

人を研究対象とする学問には「実践」と「研究」という2つの側面があります。
さらに研究を分けると基礎研究と効果研究に分けられます。
基礎研究は実験によって理論を確かめるための研究で、効果研究はその名のとおり、効果を調べるための研究です。
これらの研究によって「この方法は危険性が低く、効果がある」と確かめられたものを現場で実践するのが理想形です。

しかし、この理想を達成するのは容易ではありません。
ビジネス重視(儲け主義)の人であれば絶対にこんな面倒なことはしません。
その代わりに「劇的効果」「カリスマ」「一流」などの派手な言葉を連呼し、周りの人が「すごいすごい」と盛り上げます。
一般に人間というのはイメージや印象で物事を判断するので、よほどリテラシーが高い人でない限り、これだけでだますことができます。

数々の科学的研究の結果、催眠の有効な面と同時に無効な面も明らかになってきました。
そして、催眠の神秘が徐々に明らかになり、現実や限界が見えてくるにつれ
「催眠の限界なんか口にするな。商売の不利になるだろ!」
と興奮する人々が出てきました。先に書いた儲け主義の人々です。
彼らのような人々がサイトやセミナーで必死に「催眠はすごいんだ!夢をゲットできる方法なんだ!」と情報操作を試みているわけです。


催眠に限らず、妙な健康商品や新興宗教や能力開発など「こころ」に関するビジネスに共通する宣伝方法は、マスコミやネットの力を活用することです。
一般の人にとってはテレビやネット、もしくは一般書籍が主な情報源ですから、これらを上手く活用しながら「夢」や「希望」を語れば、たとえ根拠のない夢や希望であっても、淡い期待を抱く大衆を扇動することができます。
このような商売を行う業者は、専門家の世界で認めてもらおうなどとははじめから考えていません。
彼らの目的はただ一つ。
素人を取り込んで認めてもうらことだけです。
専門家に認めてもらっても金になりませんが、素人をうまく丸め込めばいろいろ買わせたりセミナーに参加させたりできるからです

ここまで書いてきたことが信じられない人のために簡単な実験があります。
催眠のすごさを語っている催眠術師のサイトへ行って、催眠の限界を延々とメールで送ってみてください。
どんなに論理的な正論であっても、相手は良い反応をしないでしょう。
催眠術師にとって催眠の限界は口にしてはいけないタブーなのです。
(表面的に催眠の限界を認めながら、実際には催眠の効果をアピールしまくるという新手の催眠術師もいます)

最近はウェブ上で誰でも簡単に宣伝が行えるようになりました。
そこでは宣伝費用などは無料に近いし法律の手も及びにくいので、アピールの場としては最適です。
近頃は見るからに怪しげなページは少なくなりましたが、その分、怪しいのかそうでないのか見分けにくいページが増えてきました。
初心者にはまったく見分けがつかないようなサイトも多いです。
ネットや一般書の有効活用は催眠術師のメディア戦略にとって必須であり、それゆえ宣伝方法も巧妙で組織化されています。

2016年05月11日